竜宮の御使い
「ぷはっ!!はぁ…はぁ…げほっ!ごほっ!!」

 肺いっぱいに空気を吸い込んで思いっきりむせ込んでしまう。痛む胸を抑え、涙目になって周りを見ると、4本の腕が私の体を抱き寄せた。

「っつ!!?」

 混乱する視界に飛び込んできたのはアメジスト色の双眸が二つ。銀髪にアメジストの瞳と深い藍色にアメジストの瞳の全く同じ顔の人間とは思えない程美形の男だった。

「よく参られた…。龍宮の御使いよ。」

銀髪の男がゆっくりと口角を上げる。

「我ら一族はそなたを心より歓迎する。」

藍色の髪の男が同じくゆっくりと口角を上げた。

「は…い…?」

 見た事も無い程の美形にどぎまぎして思わず視線をそらす。そして自分が何も着ていない事に気が付きとっさに身体を丸めて胸と3段腹、秘所を隠した。先ほど腕を動かした時に感じた激痛はもう感じられなかったが、今はそれどころではない。
 み、み、みられた!見られた!!?私のこの太った体…3段腹…見られたー!!よりにもよって…こんな美丈夫に!!!?
かっと全身が熱くなる。

「やっ!見ないで!!」

 真っ赤になって半ベソをかきながらから訴えると、ふわりと純白の布が私の身体を包み込んだ。二人の美丈夫はあっという間に私を顔だけだしたみの虫状態にすると、銀髪の男が事もあろうか、ひょいっと私を抱き上げたのだ。
「なっ!!お、お、おろして!!」
夢だった御姫様だっこ。でも、自分の体形から諦めていた。70キロオーバーの大女…御姫様だっこできるのは力士かプロレスラーの様なゴリマッチョでもきっと難しいだろう…。理想の細身の長身イケメンにしてもらうことは夢の中で…夢の中でと思っていたのに!!

 「やだやだ!私、重いから!本当に、もうおろして下さい…。」

羞恥とショックと驚きで、遂に涙が溢れてくる。
 そんな私の頬をさらりと藍色の髪の男の綺麗な、それでも骨ばって男らしい長い指が撫でる。

「何も気にする事はありませんよ。あなたは真綿の様に軽く。愛らしい。」

銀髪の男が優しい笑みを落とす。しかし、この体系で30年も過ごしてきた私にはそんな事容易に信じられない。

「うそっ!だって私…私…太ってるし…。」

「太っている?そんなことはない。…そなたはふくよかで愛らしい。」

藍色の髪の男が銀髪の男に抱っこされている私の横にピタリと寄り添い、銀髪の男とまったく同じ優しい笑みを落とした。
 うそだぁー…!心の中で泣きながら絶叫する私を大切に、まるで繊細なガラス細工でも扱うかのように慎重に抱え直すと、ゆっくりと歩き出した。

必死になって降ろしてくれるように頼んだが、極上の笑みと共にことごとく却下され…遂に私は抵抗を諦め銀髪の男の腕に静かに収まった。
銀髪の男は私の諦めを感じ取るとニコリと諭すような笑みを浮かべた。…この人以外に腹黒いかも…。
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