俺様男子の克服方法(短)


「なんで車?」
「なんとなくだ」
「飲まないの?」
「代行でも店に置きっぱでも、どうとでもできる」
「……本当は?」
「わかってんなら聞くな」

想像だけど、きっとこの前のお店に連れていってくれるんだと思う。
雰囲気作りのためにドライブしながら行くんだと思う。
ものっすごく幸せだ。
私のために考えてくれたこと。
私が彼の考えをわかるようになったこと。
つい数日前、あのお店に行った時とはまるっきり違う。

……という予想を大きく超え、俺様は高そうな洋服屋でフォーマルなドレスを買ってくれた。
そのための車だったのか。
ああ、この前私が気にしていたのを覚えていてくれたんだろうなぁ。
そう気づくと恥とか照れとか無駄に思える。
素直にありがとう、と伝えるとうろたえられた。

「何企んでんだよ」
「素直に受け取ってよ」
「いいや、絶対裏があんだろ」
「そんなこと言うなら一生正直なこと言わないよ」
「……俺のこと好きなんだろ」
「だから……」
「好きなんだろ?」
「……好きじゃない」
「素直じゃねぇな。あ、正直じゃねぇから、これって好きってことかぁ?」
「いじめっ子」
「ふっ」

ポン、と頭に手を乗せられる。
こんな甘い空気、むず痒い。……嬉しいけどね。
車のライトがすれ違っていくのをぼんやり眺めている間にあのイタリアンのお店に着いた。
「まだ降りんなよ」駐車場に止まるとすぐに釘を刺される。
シートベルトを外して大人しく待っていると、ドアを開けて手を出された。
俺様も礼服を着ているから、まるで、お姫様みたい。

「それ、高かったんだから裾踏むなよ」
「ドレスの心配かぁ」
「それだけじゃねぇけど」

降りると今度は腕を差し出されたので、あえてつこっまずに腕を絡ませた。
不思議と俺様口調の裏の気持ちまでわかるようになった気がする。
だから、すぐ怒ったりするのはやめ……たい。

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