エリート同期は意地悪がお好き
「それでは俺達はこれで失礼します」

そう言って頭を下げた司は、私の手を引き、オフィスを出た。

私はずっと、不安一杯の顔で、俯いていた。


「浮かない顔だな」

会社を出た司がそう言って、足を止めた。


「…そんな事ないよ」

俯いていた顔を上げ、ニコリと笑う。

「…相変わらず、芝居が下手過ぎなんだよ」

前を向いていた司はクルリと私の方を向きそう言って、私の頭をグチャグチャと撫でまわした。

「ちょ、ちょっと!何するのよ?!髪の毛グチャグチャじゃない」

そう言って怒って見せると、司はニヤッと笑う。


「こんな時に、意地悪なんてよして」
「…こんな時?」

撫でまわしていた手を止めた司は、私の顔を覗きこむ。

「…もう!なんでもない!早く帰ろうよ。お腹すいた」
「…なんでもないなんて事ないだろ?…黒川に、何吹き込まれた?」

「…何も」
「ウソつけ…言ってるだろ?お前は芝居が下手なんだよ」

「・・・」

…言えるわけないじゃん。黒川部長が言った言葉なんて。

私は何も言わず、だんまりを決め込んだ。

それを見た司は、溜息をつく。
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