エリート同期は意地悪がお好き
清水さんの言葉に、口をつぐむ。

「…私が出来ることは、全てやりますし、社長も、後一週間もすれば元気に退院です。その間、遠慮なく、社長の仕事に励んでください」

「…二足のわらじを履く羽目になるとは思いませんでしたよ」
「…司様が、社長の息子だと言うことを、誰も知りませんしね…少しの間だけなので、大変だと思いますが、宜しくお願いします…司社長代理」

「…ホンット、楽しそうですね、清水さん」

そう言って、ジト目で清水さんを見た。

…清水さんは、ホンットに楽しそうな笑みを浮かべた。

…今日から、毎日残業か。…朱莉との大事な時間がなくなるな。

そう思うだけでも、気が滅入る。

…営業部に戻った俺は、朱莉のデスクに向かった。

…朱莉に、今後の事を説明し、自分のデスクに戻ろうとしたが、朱莉のデスクの上にある、一枚のハンカチに目がいった。
…男物の、ブランド物のハンカチ。

この営業部で、そんな洒落たハンカチを持つような男はいないな。

そう思うと、途端に嫌な予感がした。
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