エリート同期は意地悪がお好き
そう言って溜息をついた部長の表情は疲れきっていた。

…私は、ただの平社員だ。

部長は、部下の事を一番に考えて、営業をまとめる事のできる人だ。私のせいで、その地位を辞めさせるわけにはいかない。

…部長に一礼した私は、会議室から一度、化粧を直しに行き、またオフィスに戻った。

…オフィスの人達は、私を心配そうに見つめている。

…笑わなきゃ。…私のトレードマークは笑顔なんだから。

「…もぅ!皆さんなんて顔してるんですか?仕事してくださいよ!ね?」

どんなに笑顔を貼り付けても、流石に無理してることは明らかで。

それでも、笑顔を絶やさないまま、私は自分のデスクにつき、今抱えている事務を淡々とこなしていく。

私がいなくなった後、みんなが困らないように…

「…朱莉」

…今、この声は、私の奮い立たせた心をいとも簡単に壊してしまうほどの破壊力だ。
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