それは危険なラブミッション
なんて人なんだろう。
背負いきれないほどの借金を返すか、縁談を壊すか、どちらかを選択させるだなんて。
それも、たった今事実を知ったばかりの私にだ。
とても人とは思えない。
解決の糸口も見つけられない、堂々巡りの話し合い。
明日の朝まで話していたところで、決裂は予想に容易い。
「まぁ、すぐに結論を出せと言っても無理だろう。明後日の午後7時半、またここへ来るとしよう。西、明後日の夜は確か空いていたな?」
後ろに控えていた西さんに予定を確認する。
またもや、そこに人がいることすら忘れていた。
「はい、ご予定は特に入っておりません」
「それまでに決めておくことだ」
「そんなっ……」
いくら時間をもらったところで、答えが出るはずもない。
ニワトリが先か卵が先か、と同じくらいの難題なのだから。
「では、邪魔をしたな」
そう告げると、すっと立ち上がって、座っていた椅子を持ち上げる。
何をするのかと思えば、それを展示してあった場所へとご丁寧にも戻したのだった。
横柄な態度の割に、片づけは自ら。
呆気に取られながら眺めてしまった。
そして、店の出入口へ向かって歩く。
西さんは私に深くお辞儀をした後、東城寺ルイを追うように出て行ったのだった。