それは危険なラブミッション

「知らなかった?」

「はい……」

「高校生の頃に東城寺の家に養子として入ったそうだ」


東城寺の家に……養子に。
ゆっくり反復しないと、理解できそうにないことだった。


「……彼のご両親は?」

「幼いころに亡くしているはずだ。長いこと施設で暮らしていたらしい」

「そう……なんですか……」


あのルイからは想像もしていなかった生い立ちだけに、驚きを隠しきれない。

ふと、動物園での会話を思い出した。

思うままに生きる動物に憧れるのは、弱肉強食の世界だからじゃないのかも。
日本を代表する東城寺ホテルのトップの養子になるということは、喜ばしいことばかりじゃない。
人が羨む富と名声を手に入れる代わりに、抱えきれないくらい大きなものを背負うことになる。
ときには感情を押し殺してまで。
だから、本能のまま生きることに憧れを抱くのかも……。

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