それは危険なラブミッション
「やだなぁ、とぼけないでください。この前からここにちょくちょく顔を出す男の人、バリ島に莉夏さんを追いかけて行きませんでしたか?」
とぼけるつもりはないけれど、ドキッとした。
それが顔に出たらしい。
達哉くんがニヤリと笑う。
「別に追いかけて来たわけじゃないのよ?」
「そうなんですか?」
「視察だって」
「その割には、莉夏さんの帰国便とか宿泊先とか、根掘り葉掘り聞かれましたけどね」
「……そうなの?」
「そうですよ? そしたら、昨日は昨日で、また別の人に莉夏さんの帰る便を聞かれて」
麻緒ちゃんまで参戦だ。
「修羅場になりませんでしたか?」
興味津々に二人が揃って私を見つめる。
決して居心地のいいものではなかったけれど、修羅場なんてたいそうなものでもなかった。