それは危険なラブミッション

「ありがとう」


遠慮なく差し出すと、ニッコリ笑顔で受け取ってくれた。


「疲れていませんか?」

「大丈夫。ありがとう」


こういう何気ない気づかいが嬉しかったりする。

店内に一人だけいたお客が帰ると、もう一人のスタッフである達哉(たつや)くんが、ニヤニヤしながら私たちに近づいてきた。


「女性の喪服っていいですね」

「あ、ごめんね。こんな格好のまま来ちゃって」


法要の後、アパートには寄らずにタクシーでここへ直行してしまった私。
もうすぐ閉店時間だからということもあって、お店に不釣り合いだとは思いつつ、全身真っ黒な格好で来たのだった。


「達哉ってばいやらしい」

「変な意味で言ったんじゃないぞ。色っぽいっていう誉め言葉だ」


麻緒ちゃんに小突かれても何のその。

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