遥か~新選組桜華伝~


「土方さんに医者に行けと言われてたのを、のらりくらりと交わしていたんです。

けれど、池田屋の件でついに断り切れず……。

町医者さんに見せたら、労咳って言われてしまいました」


「そうだったんですね……」


沖田さんはうなずくと、空を見上げた。


「自分が不治の病だなんて、夢にも思いませんでしたよ」


悲しげに笑うのを見て、瞳の奥がじわりとなる。


信じられるはずないよね。


だって…沖田さんはこんなに強くて、明るくて。


こんな元気なあなたが…労咳なんて……。


だめだ、どんなに堪えても涙が出るんだ。


着物の袖で涙をぬぐっていると。


「でも…大丈夫です」


沖田さんは振り返って、優しい笑顔を浮かべる。



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