ぎゅってしてもいいですか。
「好きなんでしょ?……だったら別に、好きでいたっていいじゃん。
思い伝わんなくたって、好きでいるのは自由じゃん。なんで無理矢理忘れようとするの?」
これが俺の本音。
だから俺も月乃のこと……諦めるつもり、さらさらないから。
「……え……」
戸惑いを隠せない表情には、今まで悩んできたことの面影があった。
それだけ月乃は、自分の恋に一生懸命なんだ。
……恋をしている、真っ直ぐな月乃。
俺は、そんな月乃が……。
それらを思うだけで、胸がきゅーっと甘く、そして苦しく締め付けられた。
「諦めるのなんて、もう好きでいることを自分からやめてるのと同じじゃん。
まだ相手に勝ち目があるかもしれないのに、そうやって自分から逃げてるだけじゃん。
自ら好きな人を忘れようとするなんて諦めることと同じじゃないの?」
きっとこいつは、忘れることと諦めることの違いが分かってないんだ。
────しばらくすると、月乃は黙り込んで、頭の中でぐるぐる悩んでいるようだった。
眉をひそめたり、顔をしかめたりしている。
やがて、すぅっと一筋の涙が月乃をほおをつたっていった。
それはどんどん溢れ、次々と涙が下へ流れていく。
……え?
……ちょ、俺、言いすぎた?
謝ろうと口を開いたら、月乃の声に止められて。
「ふふっ……」
泣いてんのに笑ってる……。
「どーして笑ってんの?」
困ったようにたずねた。
だって……どーすればいーか分からない。
「ううん、なんでも。……ありがと!」
……っ。
さっきとは打って変わってひまわりみたいな笑顔。
「ど、どーいたしまして?」
短いスカートをひるがえし、困惑した俺を置いていって、あっという間に教室を出ていってしまった。