焦れ甘な恋が始まりました
 


「……はぁ、」



ああ……もう、やめよう。

もう、考えるのはやめようと決めたんだ。


赤くなった頬に手を当て睫毛を伏せれば、カサリ……と、バランスを崩した買い物袋が足元で音を立てた。


だって、考えるだけなら社長室でもその前も、車の中でも散々考えてみたけれど、答えなんて見つからなくて。


社長への恋心を認めてしまった今、どんな言い訳も、ただの言い逃れに過ぎなかった。


だって、誰が見たって今のこの状況は、私からしてみれば棚から牡丹餅(ぼたもち)に違いない。


……例えこれが、社長の一時の気まぐれでも。

たった一度の、過ちだったとしても。


それでも、ずっと憧れていた社長に……下條さんの側にいられるのなら。


割り切ってでも、ただの一度、甘い夢を見てみたいと思った……浅はかであざとい自分がいるのは明確で、どんな言い訳をしようが、このあとに起きることに責任があるのは私も同じだ。


 
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