焦れ甘な恋が始まりました
 


……一体全体、何がどうなったんだろう。


手には、用済みとなってしまったらしい企画書の1ページを残したまま。


狩野くんに返すタイミングを失ったどころか、自分は何か、とんでもないことを仕出かしてしまったような気さえする。



「……総務部長に、また無理を言わなきゃいけないな」


「……え?」


「オープンまでの残りの3ヶ月は、御用聞きだけじゃなくて、企画部のフォローまで日下部さんにお願いしなきゃいけなくなったから」


「っ、」


「企画部のサポートも、よろしく頼む、日下部さん」


「わ、私が……?」


「日下部さんなら、できるよ。……期待してる」



だけど、社長と共に残された社長室で、そう言葉を零した社長は。


とても嬉しそうに私を見ると――――私の頭をポンポン、と優しく撫で、どこか誇らしげに、笑った。

 
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