青空の魔法
「いつもラストまでいるよね?」

「あ、はい」

「昔からずーっと、一緒だっだな…」

「ですね」

大月さんも、オレを知っていてくれたんだ…。


「理系?」

「ええ」

オレが頷くと、大月さんは数Ⅲの問題集を1冊、オレの目の前に差し出した。


「あげるよ、これ。結構いい問題が入ってる」

「え、でも…」

戸惑うオレに、彼は静かに微笑んだ。


「ボクはもういらないから」


何度もやり尽して頭に叩き込んだから、もう必要ないのか、

それとも数Ⅲが受験科目にない学部を志望することにしたのか、

わからないまま、とりあえず受け取る。


じゃ、とそのまま背を向けようとする大月さんを、呼び止めるようにオレは言った。

「あの、ありがとうございます」


大月さんの涼やかな目がオレに留まる。


それから軽く頷き、


「さよなら」と彼は小さく微笑った。

< 14 / 56 >

この作品をシェア

pagetop