青空の魔法
その夜、オレは久しぶりに机に向かった。

部屋の電気を消すと、デスクスタンドの青白い光だけが机上を照らす。

ベランダに向いた窓から見える夜空には、細い月が静かに光っていた。

その中に繊細な面影が蘇る…。


オレは、いつか大月さんにもらった問題集をそっと手に取った。

裏表紙に『大月光』と書かれた綺麗な文字。


どのページを開いても、オレンジのペンでびっしりと要点が書き込まれてあった。

赤シートでその書き込みを隠して、何度も何度も答え合わせをしたチェックの跡が残っている。

大月さんがどんだけ頑張ってきたのか、それだけでもよくわかるんだ。


そっと…その美しい文字に指で触れると、喉の奥が熱くなった。



オレは……

大月さんみたいに真面目に努力している人が死ななければならないシステムならば、

この世に生きる希望などないと、

あの頃本気でそう思っていた。
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