好きの代わりにサヨナラを《完》
あたしに映画なんてできるわけない。

こんな新人アイドルがいきなりヒロイン役なんて絶対おかしい。
一ノ瀬恭平に指名されなかったら、あたしが選ばれることはなかったはずだ。

あたしは不安でしかったなかった。
あたしの気持ちは置いてきぼりなのに、話はどんどん進んでいく。



映画の撮影初日……

あたしは架空の高校の制服、チェックのスカートと紺のブレザーの衣装に袖を通した。

まだ中学3年でセーラー服しか着たことがないあたしは、高校生になったみたいで不思議な感じがした。

地味で目立たないキャラに合わせて、やたらと枠が大きい黒淵の眼鏡をかける。

これで、少しはヒロインらしくなっただろうか。



「一ノ瀬恭平さん、入られます」

スタッフの声に、あたしは顔を上げた。
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