好きの代わりにサヨナラを《完》
撮影場所になっている学校の教室に、一ノ瀬恭平が入ってくる。

大スターだからかわからないけど、なぜか拍手で迎える大人のスタッフたち。

もう役に入っているのか、素の恭平とは違う爽やかで優しい笑顔で恭平は応えていた。

同じ制服の衣装を着ているのに、高身長でスタイルがいい恭平の芸能人オーラに圧倒されてしまう。

恭平はスタッフに案内されて、あたしの隣の席に座った。



「よーいアクション」

スタッフの声がけで撮影が始まる。

あたしたちの周りには、同じ制服を着た同年代の役者さんや大勢のエキストラたち。

ほんの一言しかセリフがない子でも、あたしよりずっと演技が上手い。

役に入り込んで自然に動くなんて、あたしにはまだできない。

監督に言われた通りの動きをして、間違えずにセリフを言うだけで精一杯だった。
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