好きの代わりにサヨナラを《完》
「いつもなんか嫌そうな顔してる」

「そんなこと……」

あたしはシュンとしてしまった犬を守るように両手でしっかり抱えた。



「それでいいじゃん。自然なままのあんたで」

あたしは、きょとんと恭平を見上げる。

「無理にキャラ作る必要ないじゃん。もともと地味で暗いんだから」

一瞬ほめられたのかと思ったけど、そうじゃないらしい。



「俺のこと嫌いかもしれないけど、役の上では恋人どうしだし。好きなやつのことでも考えてやったら?」

犬はあたしの膝からピョンと飛び降りると、恭平に向かってちょこちょこ歩いていく。
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