オフィスにラブは落ちてねぇ!!
「高瀬FP、お待たせしました。」

「ありがとうございます。」

愛美が頼まれていたパンフレットを手渡すと、高瀬FPは不思議そうに首をかしげた。

「あれ…支部長は?」

「まだ倉庫じゃないですか?私は先に戻ったので。」

「ふーん…?じゃあ、僕は企業訪問に行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」

高瀬FPを笑顔で送り出した愛美は、内勤席に着いた。

高瀬FPと入れ違いで支部に戻ってきた緒川支部長の姿に気が付くと、愛美は思いきり顔をそむけた。

(戻ってくんな!!)

緒川支部長は愛美の席のすぐそばに立って、机に手をついた。

「菅谷…。」

返事もしないで席を立った愛美の腕を、緒川支部長が掴んだ。

「触らないで下さい。」

冷たい声で愛美が呟く。

「俺はオマエが好きだ。」

「私は嫌いです。」

「なんでそんなに嫌う?」

「生理的に受け付けません。」

「なんだそれ?そんな理由があるか!!」

「無理なものは無理なんです!!猫アレルギーの私に猫を飼えって言ってるのと同じです!!」

「俺は猫じゃない!!」

「猫の方がましです!!」

「だいたい俺の事をよく知りもせずに生理的に無理とかおかしいだろう!!」

「じゃあ支部長は私の事をよく知りもせずに、なんで私なんですか?!」

「好きなものは好きなんだからしょうがないだろう!!」

「嫌いなものは嫌いなんだから仕方ないでしょう!!」

口論は平行線のまま二人がにらみあっていると、廊下の向こうから賑やかなオバサマたちの声が聞こえて来て、緒川支部長は愛美の手を離した。

「俺はあきらめない。絶対に好きだって言わせてやる。」

「絶対に言いません。大嫌いです、迷惑です。」

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