オフィスにラブは落ちてねぇ!!
美味しい沖縄料理でお腹いっぱいになった後は、夜景の綺麗に見える高台に向かった。

秋の冷たい夜風に、愛美が少し寒そうにしていると、緒川支部長は自分の着ていた上着で包むようにして、愛美を背中から抱きしめた。

そうしてしばらく夜景を眺めた後、緒川支部長は愛美の冷えた唇にそっとキスをした。

「そろそろ車に戻ろうか。」

「ハイ…。」

車に乗って、この後はどうしようかと言いながら、しばらくあてもなく車を走らせた。


結局、どこに行くでもなく、愛美のマンションの前に戻ってきた。

もしかしたらこのまま帰ってしまうのかもと思った愛美は、もう少し一緒にいたくて、緒川支部長より先に口を開いた。

「少し冷えちゃいましたね…。一緒に、温かいコーヒーでもどうですか?」

「ああ…うん、ありがとう。そうしようかな。」

緒川支部長と一緒に部屋に戻り、愛美はキッチンでコーヒーを淹れた。

「沖縄料理、美味しかったですね。また行きたいです。」

「俺は泡盛飲みたいな。」

「次は飲みましょうね。」

コーヒーを飲みながら、他愛ない話をした。

緒川支部長はコーヒーを飲みながら、愛美が必死で話題を探しているように感じた。

明らかにいつもより愛美の口数が多い。

それは必死で引き留めようとしているようにも見えるし、何かをごまかしているようにも、無理をしているようにも見える。

緒川支部長はコーヒーカップを置いて椅子から立ち上がり、ラグの上に座って、愛美を手招きした。

「愛美、こっちにおいで。」

緒川支部長が自分の隣をポンポンと叩くと、愛美は何も言わずゆっくりと緒川支部長の隣に座った。

緒川支部長は愛美の肩を抱き寄せて、背中をトントンと叩いた。

「不安なの?それとも俺が怖い?」

愛美は黙ったままで緒川支部長のシャツをギュッと握りしめた。

「俺は愛美が嫌がるような事はしないよ。安心して。」

(違う…政弘さんの事は怖くなんかない…。私が怖いのは…。)





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