もう愛情を求めない
「そうね。
毎日あの子だけが見舞いに来てるって言うのに、あの悪態はないわよねー」


すぐそこに私がいるなんて知らずに、義母の最期を担当している看護師は口々に本音を漏らす。



もちろん私は聞かないわけがない。


「死ぬ間際の人間ってさ、普段は言えない感謝の言葉を言うものなのにね」



「娘さん可哀想。
ちょっとやつれていたし。

ちゃんと世話されていたのかしら……?」


その言葉を最後に病室のドアは開かれ、看護師たちは私とご対面だ。



聞いていたよね、と言う青ざめた顔が私の方に向けられる。



死ぬ直前の人間の行動を知り、義母はそれに反した行動を取った。



< 342 / 461 >

この作品をシェア

pagetop