恋 文 日 和
時間が経つのは
恐ろしい程に長くて。
どんなに目を逸らそうとしても
彼はあたしのすぐ傍に、目の前に居る。
『学校終わったら、美咲の見送りに行く。』
今、こうして
あたしが見つめてる背中に、あと数時間後には
美咲さんが、隣に居て。
席替えしたての胸のドキドキは
突き刺すような痛みに変わっていた。
…わかってる。
あたしは、チョコレートをあげられないんだ。
だけど、美咲さんはきっと
彼にあげるのだろう。
そして、神楽くんは可愛らしくラッピングされたそれを受け取って
『ありがとう』と言うんだ。
あの、笑顔で。
あたしには、その笑顔は向けられない。
悲しいのに
裂けてしまうような痛みを感じているのに。
…お父さんに、もっと
大きいチョコレートを作ってあげればよかったなぁ。
なんて、そう思うあたしは
意識とは別の所で、悲しみを避けようとしているのかもしれない。
それでも、涙は出なかった。