月が満ちるまで

彼女が歩いてくるのが、ひどくゆっくりと感じられた。

時間を引き伸ばしているように。

近くまで来て、これはヤバイ、見すぎだと気がついた。

用もなく凝視したらアブナイ奴だと思われる。



「橘さん、晴れてよかったね」

彼女はにこっと笑って

「やっぱり晴れると気持ちいいね」

そう言ってくれた。その言葉にほっとする。

俺、アブナイ奴じゃないみたいだ。

一緒にいる浦川がハルと話している。

「宮原達はどこ行くの」

「決めてない。ちはやちゃんドコかいいとこない」

「あたしに聞かないでよぉそーゆーのは男子が調べるものじゃない」

「だってさ、ちはやちゃんが好きな所にいくほうがいいでしょ」

ハルは人のいい笑顔をつくる。ふにゃんとした、ハルにしかできない笑顔だ。

「しょーがないなぁ、風花どうする」

「いいんじゃない、一緒に行こうよ」

ハルが俺に向かって親指を立ててみせる。

おおっ

俺も両方の親指を立てる。やってくれる、ハル。

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