月が満ちるまで

軽井沢とくれば!自転車だろう!強引にレンタサイクルの店に連れて行かれる。
二人乗りもいいなぁなんて横目で見つつ、一台づつ借りる。

そこで、ハルと浦川はガイドブックを開いて、話しだした。

「どこいこっか~」

「メシ、重要だからね、ちはやちゃん」

「なに言ってんの!ここまで来たなら、お茶しなくちゃ」

ハルが指を挟んだページはさっさとめくられてしまう。

それでも、ふにゃんと笑っている。

「…案外、仲がいいのかもね」

取り残された二人が話すのは自然だ。

まったく、スバラシイぞハル!

「渡辺くん、どこか行きたい所なかった」

「全然。軽井沢なんて来たことないから、どこ行ってもいいよ」

心のなかで付け加える。君とならどこでもいいんだ、俺はね。



「じゃ、軽井沢銀座に行こう。あと湖ね」

ぱたんと、ガイドブックを閉じて浦川が宣言する。

これから自転車ツアー開始だ。

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