月が満ちるまで
待っていたかき氷が届いた。
「食べよ。食べよ」
にこにこしたハルが促す。
思っていたより、ずっとボリュームがあった。
器からお伽話の雪山のようにそびえている。器の内側に透けて見えるシロップが綺麗だ。
さくさくした大きい破片だった。
「水の味がするね」
「水が良くないと出来ないよね」
みんないっしんにスプーンを使って山を崩していく。
「ちはやちゃん、取り替えっこして食べようよ」
ハルの言葉に、浦川は渋々器を滑らそうとした。
「そんな変わらないよ」
「あ、俺マンゴー食いたい。チャレンジャーだよな、ハルは」
さっき買ったジャムは、コケモモと薔薇だった。母さんに買って行くんだ~~って言ってたっけ。
「海斗っ、お前身分をわきまえろ!ちはやちゃんが先だろ。ヒドイ奴だな」
「いいだろ、俺の食ってていいから」
ブルーハワイの器を滑らす。
浦川はどれどれなんて、マンゴーの器から氷をすくって口に運ぶ。
「あ、意外といけるわ。どんな味かと思ったけど」
「わたしも、いい」
橘さんもマンゴー味を口に運ぶ。
みんなで同じ器から食べるのがおかしい。
普段、しないから。
俺、こいつら好きなんだな。
さくさく食べても頭が痛くならない。
常温に戻してから削るかららしい。常温の氷って変だけど。
「この氷、ずうっと食べられたらいいね」
ぽつりとこぼれた言葉だった。
暖冬の影響で、必要な厚さになるまでの氷が出来なくなっていると聞いていた。
氷を切り出す回数も六回から二回に落ち込んでいるそうだ。
「俺達にできるのは、感謝して食べることだよ」
しみじみと器を見つめる。食べ始めてから、氷が溶けていなかった。
お祭のかき氷なら、器の底にシロップの水たまりが出来ているはずだ。
「すごいよね、この氷」
ゆっくりと凍らせた氷は真ん中が白くなったりしない。白いのはカルキなどの不純物だ。
向こう側の透けて見える氷を削って作ってもらっている。
切り出した氷は保存用の氷とおがくずに守られて、夏を待つ。
体積を減らしながら、俺を待っていてくれた。
何ヶ月も氷室のなかで。
「食べて帰って、みんなに言おうよ。すげぇ氷だったって」
「そうだね。なくならないようにみんなに知ってもらいたいね」
「そうだ、なくなる前にオレに返せ」
ハルがマンゴーを取り返す。
「あぁ…減っちゃった…。ちはやちゃん一緒の器から食べようっ」
おねだり光線、発射。
「悪いけど、無理。自分のを食べるので精一杯」
明らかにショックなハル。
次は頑張ってくれ。


