私はあなたが大好きでした………………。
ガチャンと玄関の開く音がした。彼が帰ってきたのだ。

「おかえり、そしてお疲れ様。」

「ただいま、」

そう言って彼はかがんで軽くキスをした。

いつもの恒例行事だ。

俺様で毒舌のくせにツンデレで、甘えん坊なのだ。

可愛い事だ。

スーツを脱いでる彼に、

「今日ね、病院に行ってきた」

と、伝えた。

彼は、手を止めて"えっ?"というふうに振り向いた。

「なんで言わなかった。」

「ごめんなさい。お母さんといったから。
一応だったしわざわざ秀弥に仕事休んでもらうのも申し訳なくて。」

「馬鹿っ!なんかあったらどーすんだよ。
仕事なんていつでも取り返せるわ!」

と、言われた。

「で?どうだったんだ?」

「うん、なんでもなかったよ。」

「はぁ。そうか。よかった。」

安堵した彼に「けど」とつけたした。

「けど?」

「……………」

「どうしたんだよ、」

「赤ちゃん」

「は?」

「赤ちゃんできたっ!」

そう言うと彼は、ポカーンと口を開けて30秒フリーズをしていた。

「ええ!赤ちゃん?ほんとに?できたのか?」

「うん、産むよ。いいよね?」

「ダメなわけあるかよ。…………そうか、赤ちゃんか。なんか、すごいなぁ」

「うん、それに、双子だって」

「…………俺がお父さん?」

「ほんとだ。なんか、変なの」

「赤ちゃんかぁ」
そう言って笑った彼の顔が可愛くて笑ってしまった。

「けどね、私は、体があれだから危険も伴うんだって。だから、明日もう一回病院に行ってお話聞くの。」

「俺も行く」

まるで子供のように素直になって、しまっておかしい。

本当に可愛い彼だ。




翌日病院でいろんな話をきいた。

双子と言うこともありかなり危険を伴うが
それでも産むということ。

病院には定期的にきて、臨月に入ったら
入院する事。もし、母子ともに危険な状況になったらどちらを優先するか前もって決めること。それからお医者さん達も全力でサポートするということ。

なんだか心強かった。

最後にお医者さんが彼に向かってこういった。

「妊娠は旦那さんの支えが何よりも大切です。奥さんは不安な気持ちや、つわりなどによる吐き気、苦しみに一人で耐えなければいけません。それを、支えて心を落ち着かせて上げるのが旦那さんの役目です。
奥さんの力になってどんな時でもそばにいて上げてくださいね。苦しそうなら背中をさすってあげて声をかけて上げてください。奥さん一人で耐えなければいけないけど奥さん一人で抱え込まないように愛してあげてくださいね。」って。

彼は、「当たり前です。妻の痛みや苦しみをわかることはできないけど側で支えることくらいできます。夫の特権なんで。」

といっていた。

なんと、いい夫なのだろうか。

私には本当にもったいないくらいなのだ。

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