ジー・フール

菊永が言ったように、詳しいことは僕らパイロットにも教えられていない。

一般公開されているのは、薬品の研究という曖昧な情報のみ。
その薬品に対して反対派と僕たちは戦っているのだ。
要するに開発社に僕たちは雇われていて、それを守るために戦闘機に乗る。
この街には賛成派の人間が住んでいる。

薬の内容はそれぞれ。
頭の回転を良くする。
手術なしで病気が治る。
歳をとるのが遅くなる。
若返る。
など。

その話だけ聞いても、麻薬等への勧誘とたいして変わらない。
それをどうやって信じさせたのか、僕にはわらない。

そういえば、僕は自分の目でその薬の正体を見たことがない。
非常に残念だ。
僕はこんなくだらないことには興味があるのに。

僕はそんなことを頭で考えながら、菊永がどうこの場を対処するのか期待していた。
彼女だけじゃない。
ここにいる僕以外のパイロットの返答と対応が気になっていた。

菊永は唇を噛みしめ、目が泳いでいる。
倉田は目を細めてビールを飲む。
冬樹の表情はいたって変わっていない。

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