14年目の永遠の誓い
うつむいたハルの顔を覗き込み、オレは許しを乞う。



「ハル、本当にごめんね」



だけど、ハルは目を合わせてくれなかった。



「ハル、改めて言わせて……オレが18になったら、結婚して欲しい」



長い長い沈黙がオレたちの間を漂う。

ハルは目を伏せたままで、オレの頭には悪い予感しか浮かばない。



「カナ、ごめん。……できないよ」

「ハル?」

「考えられない」

「ハル、あの……急なことで驚かせたとは思う。けど、」



だけど、ハルは、それ以上は聞きたくないという様子で、目を伏せて、

オレが昨日置いていったエンゲージリングの入った紙袋をオレの方に押しやった。



「えっと、ハル……」



せめて、これは誕生日プレゼントとして受け取って、と言いたかった。

けど、ハルの目が潤んでいたから、

そして、ただの誕生日プレゼントにしては、これはあまりに重すぎる指輪だから、

ハルの体調が明らかに悪そうだったから、

だから、今はこれ以上、ハルを悩ませちゃいけないと思ったんだ。



「ハル、『今は』考えられない……って思っておくね」



ハルが顔を上げた。



「ごめん。オレ、先走ったかも知れない。けどね、本気だよ。

オレは、ハルしか考えられないし、朝も昼も夜も、いつだってハルと一緒にいたいと切望してる。

堂々とハルのパートナーを名乗りたい」



ハルの表情は固く強張ったまま動かず、オレは何と言っていいのか分からないまま、ハルの頬に手を添えた。



「愛してる。大好きだよ、ハル」



ハルは数秒の沈黙の後、伏せていた顔を上げた。



「……わたしも」



ハルの目から、ずっと我慢していただろう涙があふれた。




一体、どこからやり直せば良いのか?

プロポーズまでの長い道のりを思い出し、オレは途方に暮れていた。

それでもハルとの結婚を諦める気など、欠片もなかった。

< 11 / 228 >

この作品をシェア

pagetop