14年目の永遠の誓い
「ううん。そんな訳にはいかないよ」
そんな話をしている内に、教室に到着。
「もし、気が変わったら言ってね」
笑顔のしーちゃんを見ていると心苦しくなる。
「ありがとう」
そう言って、自席に向かう。
今年はなんとカナと隣の席だ。
恐るべき確率でクジを引き当てた……訳ではなく、誰かがこっそりカナに席を譲ってくれたらしい。
「ハル、はい」
カナが窓際のわたしの机にカバンを置いた。
「ありがとう」
カナが引いてくれたイスに座って、笑顔でお礼を言う。
変わらぬ毎朝の光景。
今さっきの話題について、カナは何も口を挟まなかった。
カナは1年の頃に比べて、わたしの体調がずいぶんと悪くなっているのを知っている。
去年の秋の修学旅行だって、1年生の時なら、きっともう少し頑張れた。
年末の手術で心臓の状態は少しだけ良くなったかも知れない。
だけど、体力は大きく落ちてしまった。
運動はもちろんできない。
劇的に体調が良くなった訳でもないから、活動量も増えない。
無理は決してしないように言われているこの状態では、入院と療養で落ちた筋肉も戻しようがなかった。
例えば昼休みの30分、放課後の1時間、図書館のカウンターに入って、本の貸出や返却手続きをする……それだけの作業が、今のわたしには多分荷が重い。
返却された本を整理して、棚に戻すなんて重労働はとてもできないと、本能が否定する。
そもそも、同じ一階にあるのに、別館になっている図書館への移動がしんどい。
高校最後の年、少しでも平穏な毎日を送るためにも、できるだけ無理はしたくなかった。