14年目の永遠の誓い
向かいで、兄貴が明兄に「大人気ないなぁ」なんて、ちょっかいかけている。
明兄の返事は、「何のこと?」。オレにはやたら手厳しいけど、兄貴といるとごく普通の人間に見えるから不思議だ。



「あんまり食欲ない?」



ハルに小声で聞くと、小さく頷いた。

ハルは心臓に生まれつきの持病がある。
飲まなきゃいけない大量の薬のせいもあって胃も常に荒れ気味らしく、普段からかなりの小食だ。
肉よりは魚の方が好きだし、もっと言うなら、魚よりも雑炊とかおかゆとか、煮物なんて料理の方が好きだと思う。好物は果物の入ったゼリー。

それでも、別に肉がまったく食べられない訳でもない。
特に、今日みたいな日に出てくる肉は極上。炭火で焼くから油も落ちるし、臭みもなく、柔らかい。
いつもの年なら、ハルなりに、そこそこの量を食べている。
最初の一口で迷うなんてこと、普段のハルならない。

抜けるように白い肌のハル。
顔色が悪いと言うほどではないけど、決して良くもない。

笑顔は浮かべているけど、体調がイマイチなんだろう。

だけど、今日はハルの誕生日。
自分のために集まってもらった場で、食欲がないと言って、明るい空気に水を差したくないとか、心配かけたくないとか何とか、きっとハルはそんなことを考えている。

ハルは、いつも誰かに気を遣ってる気がする。

だけど本当は、みんな、不調を隠して無理されるより、素直に心配をかけてくれた方が良いと思ってる。



「ちょっと待ってて」



オレはぽんとハルの頭に手を置くと席を立ち、給仕をしていたお手伝いの沙代さんのところに向かった。
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