幼なじみの罪ほろぼしと恋心
「ムカつく」

「……え?」

恐る恐る隣に目を向けると、いつものニコニコ笑顔の大樹ではなくひんやり冷酷大樹になってしまっている。

な、何でいきなり?

「花乃、そんなドM男は相手にするなよ?」

「え……ドM男って須藤さん?」

「名前なんてどうでもいい。とにかくそいつには近寄るなよ、話しかけられても無視しろ」


無視って……それはいくらなんでも無理だよね?

一応同僚なんだし。


私が呆気に取られていると、大樹の右斜め前に座っていた井口君がククッと笑いながら言った。


「大樹嫉妬深いのもいい加減にしないと花乃ちゃんに捨てられるぞ」


大樹はギロリと井口君を睨みつける。


「お前には関係ないだろ? それから馴れ馴れしく花乃ちゃんって呼ぶなよ」


イケメンの大樹の怒った顔はかなり迫力なんだけど、井口君は怯むどころか笑いを堪えられないといった様子でブハッと噴出して言った。


「大樹、本当にヤバイよお前。そんなに嫉妬してたら花乃ちゃん外に出られないじゃん」

「呼ぶなって言ったろ?」


大樹が更に苛立ったその時、沙希が井口君の肩に手を置いて身を乗り出しながら言った。


「花乃でいいんじゃない? だって青山さんじゃ結婚した時に面倒でしょ?」

「え?」


大樹がピクリと片眉を上げる。
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