幼なじみの罪ほろぼしと恋心
「先座ってろよ」


大樹は黒髪の男性に、私に対していた時より大分トーンの低い声で素っ気無く言う。


人懐っこくて、ちょっとイラってする位明るい大樹の態度にしては意外だった。


もしかして今日はあまり機嫌が良くないのかな?

大樹だって感情の波は有るだろうしね。


でもまあいいかと、直ぐに気にするのは止めて、私も席に着こうとした。


私が大樹と話している間に席は決まっていた様だ。


沙希の隣の端っこの開いていた席に座ると、私の前に先ほど大樹に話しかけて来た黒髪短髪の男性が座ろうとした。


その瞬間、

「井口、そこは俺だから」

大樹が井口と呼んだ黒髪短髪男性を押しのけて、私の前の席に堂々と座ってしまった。


その強引で強気な態度に唖然とした。


大樹が目の前に座る不快感も忘れるくらいに。


沙希や美野里もびっくりしている様だ。


でも大樹の同僚達はそれ程驚いてなく、押しのけられた井口さんも気を悪くした様子も無く、ニヤリと含み笑いを浮かべた。


< 57 / 268 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop