危険な愛を抱きしめて
 

「今日は、抵抗しないのか?」




「……うるせぇな」




 由香里と同じ瞳を持つ、巨(おお)きな男が。

 礼服を着たまま、漆黒のネクタイだけを緩めて、のしかかって来るのを。

 流す涙も枯れはてたオレは。

 ただ。

 ぼんやりと受け入れていた。

 さっき、コーヒーに混ぜられて飲まされた、薬の余韻で。

 カラダは、奇妙に疼いていた。

 熱く。

 ダルく。

 ソファに、沈み込むように座り。

 すでに、指一本動かす気の無いオレを。

 人形のように抱きしめて、薫はオレにくちづける。

 
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