危険な愛を抱きしめて
「アヤネさま。
 また、そんなわがままを……
 さすがに今日は、これ以上。
 村崎さまたちに、ご迷惑をおかけするわけには参りませんよ?」

 優しくたしなめる坂田に、アヤネはいやいや、とクビを振った。

「だって……このまま帰ったら……
 わたし、すっごく後悔する気がするんだもん……」

「なんだ、それは?」

 目を伏せて、小石を蹴るアヤネに、オレはクビをかしげた。

 女って、時々良くわからない。

 坂田と一緒に肩をすくめた時、アヤネは急に元気よく言った。

「あ、そだ。
 音雪も一緒に車に乗って、家まで送ってくれない?
 そしたら、おとなしく帰る♪
 ついでに、わたしの部屋でお茶しよ?」

「う」

 中に星をちりばめたような。

 きらきらしいアヤネの瞳がオレを見た。

 ついでに、両手を胸の上に組んでお願い、なんてされたら。

 男だったら、誰でも、よし、まかせろとか言ってしまいそうなしぐさだった。

 しかも。

 はっきり言って、アヤネの外見はオレの好みだ。

 長い髪に、白い肌。

 細いくせに、でるところは、でている柔らかそうなカラダ。

 そして、ヒトより大きな、目。

 それが、オレを頼ってうるうるしてる。



 ……だけどそれは……



 ……アヤネの目は。

 本当は、ちゃんと「オレ」を見ているわけじゃないことを、オレは知っている。
 

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