危険な愛を抱きしめて
「ここのところ、ずっと会ってなかったけれど。
 由香ネェは相変わらずで安心したよ。
 やっぱり、ずっと道場に入り浸っているのか?」

 ガキの頃は。

 由香里と二人して。

 毎日、ずっと一緒に、泥だらけになって遊んでいたのに。

 中学にあがった頃から、なんとなく遠ざかり。

 由香里と違う高校に入ってから、昔から続けてきた古武術の道場以外では、姿を見ることはなくなった。

 それも、最近サボっていたから……どれくらいぶりだろう。

 由香里とちゃんと顔を合わせたのは。

 学校帰りにばったり出会った今日まで。

 相当長く会っていなかったような気がする。

「そうでもないわよ?
 最近は、ケーキ屋でバイトも始めたし」

「ケーキ屋!?
 不器用なのによくも、まあ。
 由香ネェって、トングでケーキを崩さずにつかめたんだ?」

「莫迦ね。
 それくらい、できるわよ」
 
 オレの言葉に、由香里は、肩をすくめた。

「……雪も……
 少し変わったみたいよね。
 喧嘩となったら、売られなくても買ってたのに。
 喧嘩相手をあたしに譲るなんて」

 ペットボトルのフタを開けながら、由香里は、流し目でオレをみる。

「アヤネちゃんだっけ?
 ……可愛い彼女が出来て、少しは丸くなった?
 最近、道場に練習に来ないのも、デートで忙しいのかしら?」

「別に、アヤネは、彼女じゃねぇ!」

 思いのほか大きな声が出て、由香里よりも自分の方が、驚いた。

 


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