危険な愛を抱きしめて
「娘と、婚約解消して……
 何の関係もなくなれば。
 わたくしと、お付き合いしても構わない……ということですわよね?」

 ぐい、と積極的に迫ってくるさやかに、一歩引いて。

 オレはなんとか、笑った。

「御冗談を。
 九条さまの旦那さまを差し置いて。
 オレが出る幕など、ありません」

「いいえ。
 大ありですわ」

 言ってさやかが、また妖艶にほほ笑んだ。

「夫は、忙しくて。
 わたくしがいつも退屈で、退屈で。
 淋しいことも、お伝えしつづけたら、多少の浮気は、黙認すると」

 ……だから、あんたはせっせと、ホストクラブ通いなのか。

 ウチの親父もどうかと思うが、アヤネの母親も大変そうだった。

 こっそりアヤネに同情する間もなく、さやかが、迫る。
 
「初めて、音雪さんを見た時から。
 なんて、キレイなコだろうと……
 もし、機会があれば、一度抱いてもらおうと思っていたんですわ」

「お断りします」

 即答するオレを、さやかは、きり、とにらんだ。
 

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