危険な愛を抱きしめて
 

 中々開いてくれない目を、無理やり開くと。

 そこに、天使がいた。




 ……と思った。

 天井も

 壁も

 カーテンも

 何もかもが真っ白な部屋で。

 開け放した、大きな窓から身を乗り出すようにして。

 一人の少女が空に向かって、手を伸ばしていた。

 その少女の手に。

 陽気に鳴く小鳥達が、たくさん群がり。

 あるいは休んでいるのを、オレは。

 かすむ目で、ぼんやりと眺めていた。

 鳥達は、まるで。

 少女を空へと誘っているように見える。

 平和で。

 奇妙にキレイで。

 何だか心が安まる風景だった。

 多分。

 天使がいるのなら。

 天国なんてモノがあるのなら。

 こんな風景なんじゃないかと、そう思う。




 ……由香里?





 だんだん目の焦点が合い出すと。

『天使』は見知った顔になった。




 チチチチ

 キュ キュ………


 小鳥たちが。

 笑っているかのように、ひときわ大きく騒いだ。

 ……と、思ったそのとたん!

 窓から、身を乗り出していた彼女の姿が消えた。


 出し抜けだった。


 ……本当に、飛びやがった!?



 いや!



 窓から、落ちたのか!?


 
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