鈴木くんと彼女の不思議な関係


「悪い男だな。」
「結局、野良は野良だから、最後はこんなもんでしょう。でもお互い様だし。」
「最後って、別れ話が拗れてのそれか?」
「拗れたりしてませんよ。終わっただけです。」
「おまえ、いつか刺されるぞ。」
「それはやばいですね。」

 多恵も心配だがコイツもなぁ。。俺はため息をついた。音響担当なのに、人手の足りない大道具を、文句も言わずにいつも手伝ってくれる。しかも余計な口は出さない。後輩としては本当にいいヤツ、に見えるんだが。

 川村のやる事は俺には全く理解不能だ。コイツには女が絶えた事がない。二股どころか何人彼女がいるのかさえ定かではない。だが、それでコイツが満たされているのかと言えば、俺は疑問だ。毎回、顔につられてやってきた女子と、言われるままにつきあっては別れることを繰り返している。だからといってやりたい放題という訳でもないらしい。

 時には身体の関係を持つ事まであるらしいが、誰とでもそうなるわけでもない。自分の欲望よりも、相手のレベルに合わせて、女を喜ばせる術に長けている。なのに誰とも長く続かない。遊んでいるだけが良いのかもしれない。

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