鈴木くんと彼女の不思議な関係

 翌日、授業が終わり、部室でメイクを終え衣装に着替えると、小道具を入れたダンボール箱を抱えて体育館へ向かう。多恵は舞台の上で大道具の設置、照明の調整など、舞台装置全体の指揮を執っていた。

 普通なら3年で総監督の鈴木が指揮をとるところだが、鈴木の筋肉を大道具の運搬に使わないのは適材適所に反する。面子を気にしない鈴木らしい采配だ。
 上級生に対しても遠慮なく指示を出す多恵も、図太いというかなんというか。多恵と鈴木は相性がいいと認めざるを得ない。

 2人は普段と変わらず阿吽の呼吸でテキパキと舞台を整えて行く。昨日までと何も変わらない2人に、なんとなく拍子抜けする。やがて開演のブザーが鳴った。
 
「多恵、なんか言ってたか?」
 物語後半、私の出番に先立って、スモークのためのドライアイスの入った発砲スチロールにバケツの水を投入しながら鈴木がボソリと言った。

「いいえ、何も。今日は忙しくてそれどころじゃないんじゃない?」
「だな。」
「もう出るんだから、話しかけないでよ。」
「悪い。」

鈴木がウチワでスモークを舞台へ舞い上がらせる。私は腹筋に力を込め、台詞とともに立ち上がった。

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