鈴木くんと彼女の不思議な関係

「劇をやることはもう届けちゃったんだよ。それに7組で演るのに、お前が出ないとみんながっかりするだろ。お前がジュリエット演るって聞いたら、みんな見に来るって。」
「そうそう、由里ちゃんなら演技力も顔もお墨付きじゃないか。すごい話題になるよ。」
「どうして?クラスのみんなはそれで良いわけ?」
「良いんだよ。俺達は。みんなでやれれば何でも。お前だってそうだろ?」

「何でもいいなら、どうして劇なのよ。それに周りがド素人だらけで私がジュリエットやったら、浮きまくって清水由里・オン・ステージになっちゃうじゃないの。そんなの絶対に嫌。」

 言われてみれば清水の言う事には一理あった。俺はどうせ裏方だし、布施はもともとコメディアンだから問題ないが、本格女優の清水が素人のクラスメイトと同じ舞台に立ったときの事を真剣に考えてやらなかったのは、俺達の配慮が足りなかった。

 せめて清水に見劣りしないロミオがいればよかったが、そんな男はクラスにはいない。舞台での発声や間のとり方は、一朝一夕で身に付くものではないし、布施はロミオのキャラじゃないからだ。容姿も含めて確かに清水が浮きまくる。嫌がるのも無理はない。

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