鈴木くんと彼女の不思議な関係

 そう!私は多恵を守るために、鈴木とキスしたの!私なら、苛められたりしない。私なら鈴木とお似合いだって、誰もが思うもの。相手が私なら、あの女達だってきっと諦める。これは多恵を守るためなのよ!

 私は周囲に優雅に微笑み、きょとんとしている多恵に近づき、頭を撫でて声をかけた。
「これでもう安心ね。」

 私と鈴木がキスしたことも、そして多恵が鈴木の告白を断った事も、噂好きな女子達がきっと瞬く間に広めてくれる。彼女達の矛先は私へ向いて、多恵が苛められる事も減る。あとは、この場を優雅に立ち去れば、完璧だ。

 私は後ろにいた女友達に声をかけて、つとめてにこやかにその場を去った。鈴木がどんな顔をしているのか、すごく気になったけど、ここで鈴木の方を見たら台無しだ。あえて振り返らず、そのまま立ち去った。

 誰もが唖然としていて私に声をかける人はいなかった。多分、鈴木も訳が分からずあのまま唖然としているのだろう。想像すると、少し気分が良かった。

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