予感
予感


「あ、何これ~」


一人暮らしのアパートで、その物体を目にした瞬間、オレは思わずテンション高く声を発してしまった。


翌日、そのブツを鞄に忍ばせ、ルンルン気分で出社する。


「おはよー!」


元気に挨拶しながらドアを開けて中に入ると、慧人がカウンター前に居た。


「おはようございます」


どうやらコーヒーを作っているようだ。


今日は彼は茶器当番だからね。


「えっと…。愛実ちゃんは?」


部屋に充満している芳しい香りを嗅覚で堪能しながら、オレは自分のデスクまで歩を進め、手にしていた紙袋を机上に置き、そう尋ねた。


「歯磨きに行ってます。ちなみに樹さんと伊織さんはまだ来てません」

「そっか。二人はいつもギリギリだもんね」


と言っても始業時間の5分前には席に着いているし、本来はそれぐらい前に出社できてれば良いんだけどね。


何しろ愛実ちゃんがすこぶる早いのだ。


いつも3、40分前にはここに来て、時間までゆったりのんびり過ごしているらしい。


茶器当番の日にはもちろんその任務を遂行してから。


ただ、多少早起きする事になっても、朝は余裕を持って行動できた方が結果として精神的にも肉体的にも負担がかからない、というのはすごく良く分かる。


だからオレも最近、何となく、当番じゃない日も早めに家を出るようになって来た。
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