予感
「ごめん。この辺だけ、ウェットティッシュでちょちょっと拭いておいてくれる?」

「は、はい。分かりました」


力強く頷いてから、慧人は眉尻を下げ、続けた。


「……本当にすみませんでした。せっかく親御さんが送ってくれた物を…」

「いやいや、気にしないでよ」


笑みを浮かべながらそう答え、オレは出入口へと向かった。


そのまま部屋を出て廊下をテクテクと進む。


もうこのキャンディーは捨てるしかないし、それなら給湯室のゴミ箱の方が良いと判断したのだ。


…何だかオレ、この頃変だよな。


しみじみとそう思う。


すぐにテンションが上がっちゃって、浮かれ過ぎてはしゃぎ過ぎて、周りから見たらさぞかしウザイことだろう。


プライベートではそうでもないんだけど。


職場に来ると、何故だか箍が外れちゃうんだよね。


この異常な気分の高まりは一体何なのだろうか。


それについての答えはすぐには出そうにないけど、でも、何かの予感はしていた。


何かが始まりそうな…。


いや。

もしかしたら、終わるのかもしれない。


小さなつむじ風が、中心に何かを抱き込んで、ぐるぐると渦を巻き


少しずつ大きくなりながら、確実にオレ達に近づいて来ている。


そしていつかこの身を追い越し、大切に抱えていたその物を揺るぎない真実として


未来にそっと、横たえておくのだろう。
< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

荒野を行くマーマン

総文字数/15,060

恋愛(オフィスラブ)24ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
2020年4月13日公開
臆病でごめんね

総文字数/30,432

恋愛(オフィスラブ)51ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
2018/4/14公開 4/15完結
夢見るぶつぶついちごちゃん

総文字数/819

絵本・童話4ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
2016/9/15公開、完結

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop