予感
しかし勢い余って棒を掴み損ね、キャンディーちゃんが空中散歩し、結果、床に落下してしまったようだ。


指先が痛い…。


「ま、麻宮君、何てことをっ」


焦ったように発せられた愛実ちゃんのその声に、ハッと我に返る慧人。


「ああっ。す、すみません!」


そう言いながら慌てて立ち上がり、無惨に床に横たわっているキャンディーちゃんに近付く。


「あっ。いいよ慧人。オレがやるから」


ちょっとぼんやり気味だったオレもようやく自分を取り戻し、そう言葉を発した。


「え?ですけど…」

「他人の唾液が付いてる食べかけの飴なんか触りたくないでしょ~?」


そこでふと気が付く。


……それをオレはさっき、愛実ちゃんに押し付けようとしてたんだな。


ラブラブバカップルじゃあるまいし、職場の同僚にペロペロキャンディーのシェアを強要されるなんて、セクハラも良いとこだよね。


いくらなんでも調子に乗り過ぎだった。


慧人が慌てて阻止するのは、そりゃ当然のことだ。


心底反省しつつ、テーブルの上に置いておいた紙袋を手に取り、ビニールとリボンを入れた。


次いで立ち上がり、今まさにキャンディーちゃんを拾い上げようとしていた慧人に近付いて、彼を手で制しつつ、身を屈める。


棒にくっついてる部分とカケラを回収して袋の中に落とし、体を起こしながら傍らに佇む慧人にお願いした。
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