腹黒王子に秘密を握られました
 

「わぁい、お姉さん!」



今日も可愛く出迎えてくれる拓斗くん。

この無邪気な笑顔を見ると、塞いだ気持ちが明るくなるから、子供の存在って偉大だ。

両手を広げて抱きついてくる拓斗くんと手をつなぐと、拓斗くんのご両親が優しい笑顔でこちらを見ていた。

楽しそうな拓斗くんを見て、お父さんもお母さんも嬉しいんだろう。
ふたりの表情からは愛情が伝わってきて、切なくなる。

なんでこんなに愛おしそうに拓斗くんを見ているのに、ふたりは別れてしまうんだろう。

大好きな両親と三人で暮らせなくなるなんて、拓斗くんもさみしいだろうなと思いながら目を伏せた。

「色々検討しまして、新栄ハウジングさんにおまかせしようと思ってるんですが」

リビングではテーブルについた拓斗くんのご両親と金子が商談を進めていた。

「ありがとうございます」

綺麗な仕草で金子が頭を下げる。
その後姿を見ながら、やっぱりこの部屋を売ってしまうんだなと思う。
この家が売却すれば、拓斗くんの家族はバラバラになってしまう。
その手伝いを自分がするのかと思うと、なんだか苦しくなる。

「できるだけ早く売却してしまいたいと思ってるんです」

「わかりました。とても条件のいい物件なので、問題ないと思います。専門の買い取り業者に売却すれば確実に早く現金化できますが、それでは価格が大幅に落ちてしまうので、一般的な手続きをして買い手を探したいと思いますが」

「そうですね、それでお願いします」
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