腹黒王子に秘密を握られました
 
手のひらの上で転がされて、からかわれるのが不快じゃない。
しかもいちいち動揺する情けない私を、そんな愛おしげにみつめられたら、ますます好きになってしまうじゃないか。

そう思いながら膨れていると、長い指で頬をなぞられた。
視線を上げれば近づいてくる、綺麗な微笑みを浮かべた端正なお顔。
もう一度キスをされるのかな、と思いながら緊張で視線を泳がすと、金子の肩越しにカレンダーが見えた。

そして、今日の日付を見てハッとする。

「しまったぁぁぁぁぁっ!!」

「うるせぇっ! 突然耳元で叫ぶな!」

「イベント締め切り、昨日までだったぁぁぁぁぁっ!!」

「はぁ!?」

「来年の一月末にやるオリジナル同人誌の即売会イベントですよ! サークル参加の締め切り昨日までだったのに、すっかり忘れてたっ!!」

「お前なぁ……」

「金子さんと柴崎くんを見て、描きたいネタが盛り沢山だったのにっ! 年末年始の休みは引きこもって原稿する予定だったのにぃぃぃぃ!」

「ちょっとまて! なに勝手に人を漫画のネタにしようとしてんだよ!」

「私の萌え滾る創作への情熱は誰にも止められないの!」

「んなこと、知らねぇよ!」

「あああああ! 毎回参加してたのにぃぃいっ!」

私としたことが……っ!!
イベントの日程をすっかり忘れてしまっていたなんて!

最近金子のことばかり考えていたせいで、肝心のオタク活動がおろそかになっていた。

くっそう……っ!!

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