腹黒王子に秘密を握られました
事務所に戻ると、私をみつけた金子がにっこりと微笑みかけてきた。
数十分前の、バスの中での悪魔の笑みが嘘のような爽やかさですね。
まぁ、私も人のことをあまり言えませんが。
「莉央」
「へ……?」
ふわりと笑いながらこちらに近づき、掃除の時邪魔にならないように後ろで髪をまとめていたシュシュに手を伸ばした。
背後で髪がほどかれ、胸までの髪がはらりと落ちる。
ってかこいつ今、莉央って。莉央って、呼んだか?
「おい金子、友野さんに慣れ慣れしいぞ」
そうだ、馴れ馴れしいぞ。
なに勝手に人の名前呼んでんだよ。
しかも髪に触るんじゃねーよ。
めざとく声をかけてきた先輩に、私は全力で同意する。
「あ、すいません。つい」
なんてはにかんだ笑顔を見せながら、金子はあろうことか他の社員がいる前で、私の肩を抱いてきた。
はぁぁぁぁぁっ、なに肩抱いてんの、こいつ。
「俺達、付き合いはじめたので、浮かれちゃって」
……なにこの、爽やかな交際宣言。