腹黒王子に秘密を握られました

睫毛の角度をミリ単位で調整するように指先でちょんちょんと目元に触れながら、鏡越しにこちらを見る。

鏡の中でぽかんとしている私を見て、軽く片方の眉だけ引き上げた。

「あ。友野さんはこんな話興味ないですよねー。素敵なエリートの彼氏と結婚間近なんですもんね」

「えっ?」

私、結婚間近なの?
わぁ、知らなかったわー。それ、どこ情報なの一体。

「友野さんが会社辞めたら、私が代わりに一課に行けるかもしれないですよねー。わぁ、楽しみ! 友野さんいつ寿退社の予定なんですかー?」

っておい。お前さり気なくさっさと会社を辞めろって言ってるだろ。

残念ながら寿退社の予定なんて、百年先まで入ってないんですけど!
勝手に人を辞める方向にもっていかないでもらえませんかね!

「昨日も一番会社が忙しい日曜日に、休みを取って彼氏さんとデートだったんですよねぇ? 楽しかったですかぁ?」

「えっと、まぁ……」

いもしない彼氏のことを矢継ぎ早に聞かれ、頬のあたりがひきつる。

「あ。そろそろ一課の朝礼が始まるから!」

そう苦しい言い訳をしてトイレから逃げ出した。

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