腹黒王子に秘密を握られました
「いらっしゃーい! わざわざこんな田舎まで、よく来てくれました!」
タクシーから降りた途端、輝かんばかりの眩しい笑顔で金子を向かえるお母さん。
あんたの娘として生まれてから二十七年間、我が母のそんなにいい笑顔を見たのは初めてなんですけど。
運動が苦手な私がはじめて逆上がりできたときも、人前で話すのが苦手な私が泣きながら学芸会のステージにたったときも、あんたそこまで喜ばなかったじゃないかと、メラメラと対抗心が燃える。
「はじめまして。金子敦と申します」
「ようこそ、遠い所疲れたでしょ。莉央の母です。どうぞ上がって」
完全無欠の王子スマイルで頭を下げる金子に、お母さんも優しく微笑み会釈する。
そして金子に背中を向けた瞬間。
「お父さぁーん、大変ッ! 東京からおっそろしいくらいのイケメンが来たわっ!」
家の中の父に向かって絶叫する。
お母さん、聞こえてますから全部。
相変わらずな母に、思わず顔がひきつる。
ってか、久しぶりに返ってきた愛娘は完全無視かいオイ。
「……お前そっくりだな」
「どこがですか。私あんなハイテンションで騒がしくありません」
なんて小声で会話をしながら、家の中へ案内する。