今のままで
誕生日
19時になると看板の電気を消しCLOSEDの札を出す。
「咲ちゃんあと良いよ!お疲れ様気をつけて帰ってね?」

「はいお疲れ様でーす」

咲ちゃんは自転車で帰っていく。
店内にモップをかけ掃除を済ませると一杯珈琲を入れようと豆の入った瓶を手にする。
カランカラン♪扉が開く

「すみません今日はもう閉店…」

「お疲れさん」郁斗が入って来た。

「あー郁斗か?」

「終わったんだろう?飯行こう?」

「うんいいけど?ご飯なら私作ろうか?」

「いや予約してあるから行こう?」

予約ってどこ行くんだろう?
郁斗の車で走ること20分小さな森の中に可愛らしい洋館、小さな木の看板には【レストラン木苺】とある。

「可愛いお店」こんな所にお店があったんだぁ

「さあ入ろう」

郁斗は私の手を引いてお店のドアを開ける。
中から綺麗な女性が出て来て「Bonsoirお待ちしてました」と中へ招いてくれる。
お店の中も素敵でおとぎ話の中にいるよう。

「郁斗このお店素敵ね?」

「たっちゃんに紹介してもらったんだ」

たっちゃんとは優里さんのご主人の双子の弟さんで郁斗は気が合うと言っていた。

「そうなんだ」

お料理もとても美味しくて本当に素敵なお店。
また来たいなぁ…
その時先ほどの女性が 「Joyeux anniversaire」とキャンドルの点いたデコレーションケーキを運んできた。

「美寿々ハッピーバースデー」

「え?…」

「なんだ自分の誕生日も忘れてたのか?」

「…26日?」

今日は…10月26日私の誕生日だ。

「忘れてた…郁斗ありがとう」

そういえば私の両親が亡くなってから毎年郁斗がお祝いしてくれている。
いつまで祝ってもらえるだろうか?
郁斗に素敵な人が出来たら私の誕生日なんか忘れてしまうだろうか?
少し悲しくなり俯いていると郁斗は心配する。

「どうかしたか?」

「ううん何でもないありがとう…」と微笑む。

紅茶と一緒にケーキを食べる。
私の大好きな苺のケーキ。

「ケーキも美味しいね?」

「うん美味いな?」

すると郁斗はテーブルに細長い箱を出し開けるように言う。
リボンを解いて箱をあけると青い細長い箱には金の文字…
セレブ御用達のあのブランド…
中にはオープンハートにピンクダイヤの付いたネックレス…
目を丸くして驚いていると、郁斗は席を立ちネックレスを私の首へ着けた。

「うん似合うよ」と微笑む。

「郁斗だめだよ!こんな高価なもの貰えないよ…」

ネックレスを外そうとすると

「気に入らない?」と聞く。

「ううん素敵だよ…でも高価すぎるよ」

今までの誕生日プレゼントと違いすぎる。
ネックレスを外し

「こういう高価なものは彼女にあげてよ」と郁斗に返す。

「美寿々が要らないなら捨てろよ」と郁斗は少し怒って言う。

「はぁー?捨てろよって…捨てれるわけ無いじゃん」

「じゃ貰っとけよ」

「…」納得いかない顔をしてると

「ちゃんと着けとけよ!俺のって印なんだから」

えっ?
今なんて言った?
郁斗を見つめていると

「そろそろ出ようか?明日も早いだろう?」と郁斗は席を立つ。

「う、うん」

私は慌ててネックレスを着けて席を立つと郁斗は満足気な顔をして私の手を引いて店を出る。
マンションに帰り部屋の前で

「郁斗、今日はありがとう。これ大事にするね?」と胸元のネックレスを触る。

「あぁおやすみ愛してるよ」チュッと額にキスを落とした。

「えっ?」

突然の事で目を丸くして固まってる私を見てクククと笑う。

「早く部屋に入れ」と扉を開け背中を押される。

「鍵ちゃんと閉めろよ」

「う、うん…」

扉が閉まるとヘナヘナとその場に座り込む。

「どうして…」

郁斗にキスされた所が熱い。
額に手をやり
「バカ!こんな事したら私の気持ち抑えれなくなるじゃん」
涙が溢れ出る。
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